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ブログ更新3593回目。
政府が物流関連２法を改正し、多重下請けの是正に乗り出すという
ニュースがありました。
これについて、中小物流企業から見えることを書いてみようと
思います。
♦まず、業界の現状について。
物流業界は、荷主から直接受注する元請け企業がその仕事を
下請けや孫請け、さらにはひ孫請けの企業に再委託する
多重下請けが常態化しています。
これによって、中間に入る企業が少しずつ”中抜き”するので、
実際に運送を行う企業が受け取る運賃は少なくなっていき、
運送原価の大半を占める人件費が削られることで、
ドライバー職の低賃金を生み出しています。
♦荷主はどこに委託するのか？
ほとんどの元請けは大手企業が担います。
主な理由は以下の３つ。
まずSCM全体や広域での高度な提案ができる点が挙げられます。
中小の場合、どうしてもエリアや提供サービスが限定されるので、
物流改善を図れたとしても数％ですが、大手企業はその規模やスキルを
活かした”広い提案”が可能なことから、大胆な仕組みの改善によって
2桁％のコスト削減など、委託から得られる果実に期待できます。
2つ目の理由は、資金の潤沢さです。
通常、新センターの立ち上げや新しい物流システムの導入時は、
はじめの数か月は赤字が続きます。
規模が大きくなればなるほどその金額は大きくなります。
数か月後に計画通りのオペレーションになれば回収できるのですが、
中小企業ではその数か月を持ち堪えることができません。
従い、どうしても大手企業に委託する傾向が強くなります。
3つ目は、丸投げできる点です。
結局のところ、長い間物流部門に投資をしてこなかった
多くの荷主企業は物流部門が弱点になっています。
大手物流企業に許容できる範囲のコストで物流を丸投げすることで、
手離れよく物流改善を進める傾向になっているようです。
♦なぜ、大手物流企業は下請けに再委託するの?
大手物流企業の多くは上場しているケースが、多く株主の意向を
考慮する必要があります。具体的には効率よく収益を高める努力が
求められます。
また多くの固定資産、高報酬の人材を抱えることも高い収益性が
求められる理由になっています。
従い、高度な物流に自社対応し、コモディティ化した業務は
元請けが直接業務を行わず、下請け企業に安い運賃で委託する
流れが生まれます。
ちなみに大手企業の中抜き率は15％～30％と言われており、
実運送会社が2024年後も十分な運営が可能になる金額です。
加えて、コンプライアンス。
物流の仕事は、天候や事故による渋滞など自社でコントロール
できない理由の長時間労働や、重大な労災事故などグレーな部分が
生まれやすい業界です。
上場企業はホワイトであることが求められるので、グレーから
ブラックになりやすい業務は下請けに任せる傾向になります。
もちろん、地域の有力な中小企業と組むことで荷主への提供価値を
最大化しようとする目的もあると思いますが、一般的には
上で述べたようなことが委託の背景にあるようです。
♦今回の多重下請け是正で中小企業は助かるのか？
一見、喜ばしい内容に見えますが私はそうは思いません。
実はこの多重下請け問題は業界再編につながる課題とも
言われています。
貨物輸送業界の80％がトラック保有台数30台以下の中小企業で、
これら企業の大半はストロングポイントが運賃の安さです。
もし中小の運賃が上がり続けた場合、大手企業は自社対応を
選択する可能性があります。
コンプライアンス面でも収益性の面でも下請けを使う理由が
なくなれば、現在の人手不足の環境下においては、
安定性や事業継続性を選択するほうが荷主への提供価値向上と
自社経営の安定性を高められる可能性があるからです。
そうなれば、中小物流業界は淘汰される企業が多くなり、
規模の大きな企業へと集約化が進む方向になっていくと
私は考えています。
中小物流企業にとっては一見ポジティブな流れに見える
ニュースですが、その奥には大きなリスクが見え隠れする
ニュースでもあると感じています。
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